「六地蔵」「五色不動」「六阿弥陀」などは、いわゆる札所めぐりとはちょっと違うかもしれませんが、「てらまちさんぽ」をするにはひとつの手がかりになるでしょう。それらの成立にまつわる由緒やストーリーを紐解きつつ、往時の町の姿や人々の心を想像しながら愉しんでみてはいかがでしょうか。 今回ご紹介するのは、江戸六地蔵。
東京都教育庁による絵はがきの説明には、以下のように記されています。
「江戸六地蔵の由来は、その一つ太宗寺の像内にあった『刊本江戸六地蔵建立之略縁起』によれば、江戸深川の地蔵坊正元が不治の病にかかり、病気平癒を両親とともに地蔵菩薩に祈願したところ無事治癒したことから、京都の六地蔵に倣って、宝永3年(1706)造立の願を発し、人々の浄財を集め、江戸市中6か所に地蔵菩薩をそれぞれ1軀ずつ造立したものです。(以下略)」
各街道の江戸の出入り口に据えられたお地蔵さまということで、旅の安全を願う意味もあったのでしょう。
江戸六地蔵は、現在以下の6寺に安置されています。いずれのお地蔵さまも屋外に置かれた露仏で、像高は2.7m前後と大きなお像です。
- 東海道:品川寺(ほんせんじ) 品川区南品川3-5-17
- 奥州街道:東禅寺(とうぜんじ) 台東区東浅草2-12-13
- 甲州街道:太宗寺(たいそうじ) 新宿区新宿2-9-2
- 中山道:眞性寺(しんしょうじ) 豊島区巣鴨3-21-21
- 水戸街道:霊巌寺(れいがんじ) 江東区白河1-3-32
- 千葉街道:浄名院(じょうみょういん) 台東区上野桜木2-6-4(かつて永代寺にあった地蔵の代仏)
【江戸六地蔵のあるきかた】
その1 1日で6か所すべてをお参りする!
お寺とお寺の時間距離は、電車利用で30~50分程度。足に自信があるなら、電車を乗り継いで1日でまわりきることもできます。六地蔵は、各地へ伸びる街道の江戸の出入り口にあるわけですから、江戸の外周をぐるっと体感するということになりますよね。
江戸六地蔵一番の品川寺から時計回りに回るなら、たとえば、以下のような流れができます(お寺の滞在時間は15分程度として計算)。
- 10時:品川・品川寺
- (移動時間約45分)11時:新宿・太宗寺
- (約30分)11時45分:巣鴨・眞性寺、昼食
- (約30分)13時30分:谷中・浄明院
- (約40分)14時30分:浅草・東禅寺
- (約40分)15時30分:白河・霊巌寺
もちろん、霊巌寺から時計の反対回りに移動してもいいでしょう。予定を立てるときに、ランチのお店や、休憩に立ち寄りたいカフェなどを探すのも楽しいですよね。
その2 お寺とその周辺の町を味わいながら
江戸六地蔵が据えられた各お寺の周辺は、異なる6つの街道近くにあるため、それぞれ表情の異なる町となっています。まず、お寺とお地蔵さまにお参りしたら、周辺を散策してみましょう。
たとえば、宿場町品川の面影をたどるとか、巣鴨地蔵通りの賑わいやグルメを愉しむとか、清澄白河から門前仲町、森下などの下町風情を味わう、とか。江戸六地蔵参りをきっかけとして、半日ほどその町で遊ぶという愉しみかたもあるのです。
たくさん下調べしなくてもいいんです。お寺がある町には、それ以外の要素がたくさんあるはず。ぷらぷらと町を散策して、自分なりの愉しみを見つけてみませんか。