昨週末は紅葉真っ盛りの深大寺へ。清清しい秋晴れだったので、いつもはバスで行ってしまうところを、つつじヶ丘駅から歩いてみました。
つつじヶ丘駅の北口ロータリーから伸びる道の正面に「大雲山金龍寺」の納骨堂の大きな看板が見えます。納骨堂の脇が参道になっていて、その先には赤い山門。境内には木造の閻魔像を収めたお堂や瑠璃光薬師如来像のほか、十八羅漢像など、多くの尊像が安置されています。なかでも気になったのは、本堂前の道元像。そのすぐそばには大きなイチョウの木。衣に風をはらませて進まんとする道元さん、ちょっと珍しいかなと思い、しばし眺めていました。
金龍寺は鎌倉初期の創建で、江戸時代は徳川将軍家から13石4斗を安堵された朱印寺だったそうです。きっと周辺は寺域だったのでしょう、境内の背後には幼稚園と墓地があり、さらに進むと静かな住宅地が広がっていました。
住宅地を北へ進むと、少し登り坂。尾根道と思われる通りを少し深大寺方面に歩くと、浄土真宗のお寺が3か寺並んでいました。そのうちのひとつ、延浄寺の山門は坂道に面しています。おや? 山門の柱(向かって右)に時計が取り付けられているではないですか。これまた珍しい光景ですね。この日は法事の真っ最中だったようなので、山門の前で手を合わせました。
先ほどの尾根道に戻り、深大寺へ向かっていくと、五差路に出ました。その角のひとつに、馬頭観世音の石像がありました。古くからの交通の要衝だったのでしょう。
馬頭観音のそばにあった[深大寺→]のサインに従って五差路のうちの一本へ。道のりの半分くらいは来ただろうかと思っていたら、今度はY字路に青面金剛が現れました。
青面金剛の向かって左の道を進み、高速道路を越えると、沿道には造園屋さんや生産緑地などの木々に囲まれてゆったりとした環境。その緑が途切れたなと思ったら、小ぢんまりとしたお堂が出現。「法性院」というこのお堂は、もとは深大寺の絵馬堂だったらしく、この周辺の地名は「絵堂」となっています。移転や火災消失などありつつも、しっかりと地域に大事にされてきたお堂のようです。
この法性院のすぐ近くに広がる都立農業高校の神代農場の脇を通りすぎると、そこはもう深大寺と言っていいでしょう。深大寺境内西端の青渭神社。この「あおい」はなかなか読めそうにありません。地元で親しまれているのでしょうか。お詣り慣れているといった感じで、地域の方々が多く訪れていました。
それにしてもその境内の紅葉の見事なこと!緑のままの葉もあれば、黄色、橙、朱、赤と、さまざまな色が混在していました。
青渭神社を抜けて、深大寺のほうへ出ると、人、人、人!バス待ちの団体さんや人気店の入店待ち列の人々、参道の紅葉を愛でる人々…。そこまでの静けさが嘘のよう。もともと土日は混み合う深大寺エリアですが、近年オープンした「鬼太郎茶屋」の人気もあってか、老若男女、さらには世界各国からの観光客も増えているそうです。
深大寺の周辺はこの日から12月3日まで第36回深大寺そばまつり。新そばの季節ということで、毎年恒例のおまつりです。「深大寺そば食べ歩きスタンプラリー」「そば守観音供養祭献上そばの提供」「特産品の販売」等々。お寺ではお護摩のほか、「深大寺短編恋愛小説公募事業授賞式」が開催されました。実は、ちょっとしたご縁があり、この授賞式に出席させていただくことができました。授賞式は本堂での挙行。深大寺ほどのお寺になるとお檀家さんでもなければ本堂に上がらせていただく機会はそうそうないでしょうから、いそいそとお伺いしたわけです。授賞式は受賞6作品の発表と関係者のご挨拶など。受賞者は6名、お若い方は高校生、遠い方は宮崎県からでした。
式の前半、張堂住職のお話はまるでご法話。ほぼ一年前の11月24日に霜月会(しもつきえ)という法要が行われ、その日に雪が降ったことから始まり ― 深大寺の雪!忘れもしません、その数日前に足首を骨折した私は、仕事上の必要があり、車いすに乗せられて深大寺や神代植物公園をめぐったのです。
晴天のほうが快適に散策できたでしょうが、降り続ける雪がかえって色づいた木々を美しく見せてくれ、その光景は鮮やかに記憶されました。そうでしたか、この日に法要が執り行われていたのですね。張堂住職のお話は、昨年イタリアでの展覧会に出展された白鳳仏が今年3月に国宝指定されたことがメインでしたが、深大寺の千三百年に遡る歴史やお蕎麦の「つなぎ」の話題なども取り混ぜて、すべて「ご縁」につながるものでした。雪の日に訪れた深大寺に、ちょうど一年後お詣りできたのもまたご縁なのだなと、感じ入りました。
この小説コンクールは、深大寺エリアを舞台として4000字以内の恋愛小説という規定です。審査員は作家の村松友視氏と井上荒野氏、評論家の清原康正氏と錚々たる面々。主催の実行委員には、地元調布市の有志の方々が名を連ね、応募作品の予備審査には市民の方々が参画されています。地元を盛り上げようという活動の一環としての小説コンクールというのは非常にユニークな取り組みです。回を重ねること今回で13回目。実行委員会や地元の方々、それを応援する地域、すべてがなければ続くものではありません。これからもこの公募には注目し続けたいと思います。受賞作品は毎年翌年春ごろに1冊にまとめられて出版されています。(オンラインショップ)
深大寺本堂内での授賞式では、最後に最優秀作品が朗読されました。今年の応募総数は411作品だったそうです。その中から選ばれた6作品がどんなものだったかは、来春の出版を待ちたいと思います。