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【展覧会】微笑みに込められた祈り 円空・木喰展

2015.03.09

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横浜のそごう美術館で開催されている「円空・木喰展」へ行ってきました。

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1632年生まれの円空と1718年生まれの木喰、生きた時代は異なりますが、それぞれに日本各地をめぐり、膨大な木像を刻んだ僧二人。今回は約250点もの仏像・神像が一堂に会しています。

江戸期は幕府により本末制度や檀家制度が整えられ、お寺は庶民の戸籍管理を担うとともに、縁日や季節の行事の場を提供したり、寺子屋として学びの場となったり、よろず相談所の役目も果たしたりと、地域の拠り所となっていました。お寺がそういう役割を担っていた時代、大寺院に安置された仏像が崇められただけでなく、歴史に名を遺すことのなかった僧などによって彫られた無数の仏像が、庶民に慈しまれていたはずです。円空、木喰が遺した像には、お寺に集う人々やその地域からの求めに応じ、文字が読めない、経典が読めない人々にも仏の教えを伝えようとする狙いがあったと思われます。指先ほどの木端仏のひとつひとつ、子安観音のかずかず、そこに人々は日々の暮らしの安定や家族の幸せ、そして長くはなかった寿命の先にある来世での安穏を願ったのでしょう。

円空・木喰によって木材や木っ端の中にその姿を見出され、彫り出された神像や仏像は大きさもさまざま、仕上がりの状態もさまざまですが、共通するのはどの像にも穏やかさが感じられることでしょうか。その微笑みに、庶民の平穏なくらしへのささやかな願いを感じました。仏像と微笑みと言えば「アルカイックスマイル」が思い浮かびますが、円空・木喰の像が湛える表情は、もっと素朴でおおらかです。また、朽木を火炎に見立てたり、木材の節くれを生かしたりと、自然と信仰との接点や融合がそこに見えるような気がしました。

像をひとつひとつじっくり拝していると時間を忘れますが、「もともと置かれているのはどんな場所だろう?」「その場で見てみたい」と思うようになりました。特に、展示の後半にある木喰の立木仏の解説には、全国で数体は立木のままにあるという記述があり、それを見にいきたくなりました。どこにあるのか調べてみようと思います。

微笑みに込められた祈り 円空・木喰展
横浜そごうでの展示は3月22日まで
その後の巡回は以下
3月28日~5月18日 山梨県立博物館(山梨県笛吹市)
6月13日~7月12日 松坂屋美術館(愛知県名古屋市)
7月17日~8月23日 岡山県立美術館(岡山県岡山市)